無題

夢であるならば、夢のほうがいいかも知れない。
でも、現実であればもっといいかも知れない。


夢を見た。
はれたいい天気の日だ。
こんな日はふらりと近所の河原まで出かけて川の音を聞きながら
本を読むのがいい。
ちょうど仕事は休みの日だ。
あれ?何の仕事だったろう?
...特に気にすることでもないから本を持て出かけよう。


河原は気持ちのいい風が吹いている。
いい天気のせいかちょっと汗ばむくらいだ。
そうだ、河原に隣接している公園に行けば日よけがあったはずだ。
早速移動してみると公園には誰もいなかった。
静かに本が読めるな。


読みふけって気が付けば夕方。
昼も食べずに読書をしていたのでおなかがすいた。
面白い本だ。
内容は...特に気にすることでもない。
でも、面白かった。


夕飯は帰り道の途中にある弁当屋
弁当屋には誰もいなかった。
でも、弁当を買って食べた。
うまかった。


久々にビールでも飲んでみるか。
ここの所忙しくてお酒なんて飲む暇すらなかった。
寝ることだけが唯一の楽しみ。
そんな生活だった。


近所の酒屋でキンキンに冷えたビールとサキイカを買った。
酒屋には誰もいなかったが、買った。
家に戻ってサキイカをつまみにビールを飲んだ。
うまかった。


こんな休みの日は何日ぶりだろう?
いつもは忙しく会社で働いて、帰れるのは週に2,3回。
泊り込むこともざらにある。
鬱々とした環境で、終わりの無い仕事をこなす。
いや、終わりはあるはずなのだけど終わらない。
なぜだろう?


でも、今日は久々の休みだ。
そうそう、明日も休みだった。
連休なんてここ数年とった事が無い。
なんていい気分だろう。
明日もゆっくりと過ごせることが出来れば..........




雨音で目がさめた。
休みなんて無い。
今日もこれからすぐに出社して昨日の残務をこなさなければならない。
スケジュールは毎日遅れが増えてゆく。
もともと間違ったスケジュールが引かれているためだ。


夢の中だけでも休みが取れて幸せだった。
こんなすっきりとした目覚めは久々かもしれない。
これも、昨日気まぐれに飲んだワンカップのおかげかな?
でも、考えるとつじつまが合わなくなる。


仕事は何のためにしているのだろう?
食べるためなのに、最近まともに食べた覚えが無い。
趣味のために少し余裕があるといいなと思ったが、
趣味のためにお金を使う暇が無い。


お金はたまってゆく。
会社が残業代だけはちゃんと計算してくれているおかげだろう。
でも、休んだ覚えはあまりない。
有給は全て給料に変わり、どういう手品を使ったのか
労働基準局の点検を受けたとき問題は一切出なかったということだ。
俺は毎日働いているというのに。


もう、こんな生活は嫌だ。
いつまでも夢の中の世界がいい。
毎日、趣味の本を読んで暮らしたい。
仕事で誰が困ろうと俺の知ったことではない。


と思いながら、いつものように出かける準備をして会社へ向かう。
今日は雨降りだから電車が混むな...
そんなことを思いながら足は駅へ向かっている。
朝食はいつものコンビニでサンドイッチとウーロン茶と野菜ジュース。
毎日同じメニュー。


つまらない。
何もかもがつまらない。
いつか、こんな生活から逃げてみたい。